JAMのユネスコ・ウィークへの参加の目的は、これまでに参加がなかった国へのアプローチと、アートマイルのホスト国を世界に拡げることでした。この2点において大きな成果を得ることができました。
アートマイルのホスト国を拡げるというのは、平和で持続可能な世界の実現のためには、JAMが日本の子どもたちを世界につなぐだけで実現できるものではなく、他の国でもその国の子どもたちを世界につなぐことで、未来を創る子供たちをもっと重層的に世界につないで、平和な未来を創ろうと呼びかけることでした。
このJAMの提案に対して以前からドイツのNGOとフランスのユネスコASPnetが関心を示していました。オタワではドイツとフランスの関係者と直接会って話をする良い機会となりました。また、会議で出会った中国のユネスコ機関も関心を示しており、今後取り組みを検討することで相談を続けることとなりました。
ドイツでESDに長年関わってきたNGOの方がアートマイルをドイツで行うことに前向きで、会議に参加するためではなく、私たちと話をするためにわざわざオタワに来られました。JAMは、ドイツでアートマイルが順調にスタートするように、プロジェクトを運営管理するノウハウを提供し、立ち上げのサポートをしていきます。
<学校訪問>
オタワから車で1時間ほどのところにあるRothwell-Osnabruck School(小学校)はアートマイルに毎年参加しているリピーター校です。
昨年9月に始まったアートマイルの国際協働学習が終盤を迎え、子供たちがこれまでの学習の振り返りをしているタイミングで、ドイツの方がRothwell-Osnabruckを訪問して教師と子供たちから直接アートマイルの話を聞くことができました。
昨年2016年12月のユネスコ・アートマイル展でフランスのASPnetナショナルコーディネーターに会った際にフランスでのアートマイルの立ち上げを提案してからフランス内で検討が進められていました。
会議に参加していた検討メンバーの一人と立ち上げに向けて意見交換をしました。帰国後、その方が中心となってフランス・アートマイルを立ち上げる提案書をユネスコ国内委員会に提出したとの連絡が入り、フランスが実現に向けて動き出しました。
現在世界は急速にグローバル化している一方で、世界中で自国第一主義が台頭して社会が不安定化しており、子どもたちは未来の予測が立ちにくい時代を生きています。子どもたちは自分たちの未来に安心して希望と夢を膨らませることができるというよりは、地球の環境と世界の安全に不安を感じながらこれからを生きていくことが予想される状況です。
自分たちの周りの問題も自国だけで解決できないほどに世界と複雑に繋がっている時代に、子供たちは世界の同世代と知恵を出し合って、協働して新しい問題に立ち向かっていかなくてはなりません。アートマイルは、子供たちが世界の同世代とインタラクティブに学び合い、協働して新たなモノを生み出す国際協働学習を進める中で、自分たちの生きる世界を自分たちの手でより良くしようと考え、行動する力を育むことができる学習の一つであると考えています。
今回、オタワで、他の国でもその国の子供たちを世界とつないでアートマイルをしようという動きが出ていることを確認でき、立ち上げに向けて話し合いができたことは、平和で持続可能な未来を創る子どもたちをグローバルシティズンとして世界中で育む挑戦への第一歩として大きな成果でした。
また、会議期間中に、ペルー、ミャンマー、スウェーデン、デンマーク、エストニア、スイス、オーストリア、ポルトガル、レバノン、バーレーン、コートジボワール、マダガスカルなど、これまでにアートマイルに参加していない多くの国の教育関係者と出会うことができました。
これは、オリンピックが開催される2020年に世界中の子どもたちと共同制作した壁画を展示して、世界中のお客様をお迎えしようという計画を進める上で意味がある出会いです。
平和で持続可能な世界を自分たちの手で創ろうというメッセージを込めて作成された子どもたちの壁画は、ESD・GCEDの学習の目に見える成果です。子どもたちの未来に向けたメッセージを2020年に世界中に発信したいと計画しています。